路地である。
瓦とトタンが複雑に影をなし、雫の垂れる音がする。薄暗い午後の路地である。
「高杉さんって、」
場違いな声がする。表に出ればなんら問題のない、むしろ霞みそうな声である。が、影を満たしたこの裏路地は、潜めた声が似合うものだ。
「ほんとに物好き」
場違いな山崎は憎いほどに、ゆっくりと声を出し終えた。一息に言えばいいものを。当の高杉は山崎の隣で、忌々しげに舌を打つ。
睨み付ければ瓢とした瞳がこちらを見つめる。そして山崎は続けた。
「何に騙されたら、俺なんかと並んで歩けるの」
「何が言いたい?」
遠い言い回しを厭うて聞き返す。
「だってこんなこと、俺でなくてもできるでしょう」
散歩の同伴なんか。誰かにもできることを、どうして俺にやらすの。そこで言葉は切れた。そしてまた黙って歩き出す。
高杉は呆れていた。小さいことを気にする男だ。それに尽きる。監察のくせに少し鈍いということも付け加えておく。
「言わなきゃ分からんか?」
山崎は頷いた。ああ、ひとというのは難しい。面倒だというのは眼で言い、口に出す。
「何をやらすかに意味はねェ。お前にやらすのに意味がある」
そういって低く高杉は笑うが、言葉はひどく遠回しだ。さきの山崎に文句は言えぬ。
山崎は笑んでいて、高杉を見てから上を見上げた。
切れ切れに見える空は青く、ああ今日は何かいいことあるかもと山崎は独り言をのたまった。
レナのryanさまより、5000打のお祝いということで頂いてしまいました。どうしよう高山……!
じゃあお前はどうなんだ! と山崎に問い詰めたい。山崎に対する高杉さんの言葉とか、何もかもがど真ん中でした。ずるい高山最高です。
ryanさま本当にありがとうございました! ずっと宝物にします。