春宵



 ふと自分は何をしているのだろうと思うが、それは堂々巡りを繰り返すだけに終始する。努めて何も考えぬように道を歩いた。
 いくら地味といわれる山崎でも、平等に歳を取る。昼間は近藤や、やや乗り気でない土方を筆頭にささやかな宴が催された。お開きとなって部屋に戻り、一度だけ屯所の方へ振り向いて出てきたのだ。
 木の節の数まで覚えられるほどに見慣れた階段を上がり襖を開ければ、高杉は果たして紫煙をたたえてそこにいた。
 傍らに布の包みを置いて。
「誕生日だってな」
「なんで知ってるんです」
「俺を誰だと思っている?」
 高杉はさも可笑しげに低く笑った。造作なく包みを掴んで、投げてよこす。山崎が縮緬を開けば、華奢な金色の細工がなされた小梅の帯留めがふたつ出てきた。
「……帯留め?」
「しょっちゅう女の格好してンだろう」
「仕事ですよ」
「次つけてこい、脱がせてやる」
「人の話聞いてました?!」
 叫びながらも、山崎はたからものを扱うようにして帯留めをふたたび包む。提げるようなものは持っておらず、少し手をさまよわせてポケットに入れた。
「でもこの時期に梅ですか」
「とっくに春だろうがよ」
 紫煙を吐いて、ほそく口を開く。凛として詠う。
「陽炎の…… はる心もち さ揺らぎす 君の枕辺 いざや訪ふ」
 春の歌であるらしい。男が女へあてた歌ととれる。張った心を春に揺らす、あなたの枕辺へ。
 高杉は案外、唐突な行動が多い。
「どう思う」
「そりゃ、春の恋歌だとしか。……まあ、ずいぶんと情熱的ですよね」
 高杉さんにしては。という言葉は隠した。あなたの歌ですか、と聞けば否と返った。よみ人知らず。
「覚えておきな。風流を解さねェってのは損だぜ、」
 揺れているのはどちらなのか。
 そうして山崎は惑う。遠回しに愛を歌う唇、気まぐれなこころ、気障にも取れる仕種、やわく頬に触れてくる指先。
 おそらく次に来るときは女の格好をして、深夜に忍ぶのだろうかと薄く思う。今があたたかいのだから、次はそれでもいいかと思えた。








レナのryanさまよりいただきました、高山です。(普段は高近で活動されています)
リクエスト受付ということで甘えさせていただきました。
高杉さん本当男前。超かっこいい。粋すぎる。「脱がせてやる」ていうのがツボすぎました。そういう高杉さんが好きです。飄々としているようですごく甘い感じ。
ど真ん中でした。ありがとうございました…!