言の葉と舞い



 障子は無造作に開け放たれ、開け放した軒先に舞燈籠が吊り下がっている。その奥で高杉は壁にもたれて、回る舞燈籠を眺めていた。
 開いた障子と見慣れぬものに少々面食らいながらも、山崎は畳を踏む。ちょうど舞燈籠が目の高さで回っていた。
「走馬灯じゃないですか」
「縁起悪ィ言い方すんな。舞燈籠だ」
 高杉が歌うように話すのは、こうして言葉を選ぶからなのだ、と山崎は思った。刀を持つ一方で、雅人のような身の振り方をする。その瞳に、所作に、言葉に、視線も心も何もかも吸い寄せられる強い引力のようなものがある気がしている。
 舞燈籠は描かれた秋津の影を映し、小さく音を立てて回る。中は蝋燭なのだろう、時折ちらちらと灯りが揺れる。危うげに灯り回る舞燈籠は、どうしても山崎には走馬灯としか思えなかった。
「人は死ぬとき、走馬灯が見えるって言いますよね」
 高杉が頷くのが気配で分かった。
「だったら俺、あなたに殺されたいな」
 山崎は時折、殺して欲しいと請う。それから、甘い言葉ばかりを吐いては高杉の呼吸を奪ってゆく。
 口が開く。

「そうしたら死に際の走馬灯も、高杉さんを見られるでしょう?」

 呼吸が止まった。
 舞燈籠の傍らで浮かび上がる山崎の表情は、ひどく美しかった。
 おそらく自分が山崎を殺す刹那には、彼はこのような表情をするのだろうと。恍惚に満ちて、莞然と笑むのだろうと。
「……縁起悪ィ」
 ただそれだけを絞り出す。
 言葉の甘さに、溺れそうだ。
「そうも言ってられない……かなあ」
 互いに明日命がなくなるかも知れぬ身の上。それでも高杉には縁起が悪い。薄く記憶が蘇る。
 だのに、傍に居ろ、とは言えなかった。








レナのryanさまよりいただきました。相変わらずカプ違いなのにもかかわらず甘えております。リクエスト受付に乗っかってお願いしたのですが…隙あらば!という気がしなくもない。
ロマエス捏造の「花に色香は劣れども」ベースで書いて頂きました。うれしい!