夜中に少し目を覚ましたら、手が誰かに握られていた。
暗くて顔がよく見えない。手を握ってみれば、少し握り返されたような気がした。
「……沖田さん?」
ごそ、と衣擦れの音が大きく響く。握った手の先にいる人は眠ったまま山崎を抱き寄せるように腕を伸ばした。窓から細く差し込む月明かりが色素の薄い髪に反射する。鼻先を摺り寄せれば、温かい匂いがした。慣れた匂い。
抱き寄せられたことで距離が近い。足を絡めてみる。沖田は「ん…」と小さく鼻を鳴らして、ゆっくりと、薄く目を開けた。
「沖田さん?」
「うん……」
「どうしたの?」
「……うん、外出てた」
「それは知ってますけど……」
深夜巡回の当番だったのだ。それくらいは山崎だって把握している。
少し緩んでいた腕が再び山崎を閉じ込めて、近付いた唇が山崎の唇に触れた。
「外、すげえ、天気いいぜ」
「はぁ……」
「明日、一緒にどっか行こうって、誘いに来たけど、寝てたから」
「…………」
「俺も一緒に寝ようと思って。明日、一緒にどっか、行こうぜ」
溜息交じりの、半分眠っているようなぼやけた口調でそう言って、沖田は山崎の頬を撫でた。笑うように目を細めて、再び小さくくちづけられる。
「おやすみ」
「……おやすみなさい」
そのまま腕に捕まえられて、春の朝日が昇るまであたたかい部屋でふたりきり。