狗ってェのはあんまりじゃねェの?と旦那は砂糖の塊を舐めながら言った。
「はあ」
「言うことに欠いて狗って、ジミーはそれでいいの?大丈夫?」
辛くなったらうちにおいで、と、やはり砂糖の塊を舐めながら、意識の大半をそちらに集中しててきとうなことを言う。
コイツは俺の飼い狗だから触んじゃねェ、と言った副長の暴言に対する気遣いだ。
はは、と乾いた笑いを零しながら、俺は頭の中でいろいろと言葉を練る。
「んー、まあいいんですよ」
「いいの?ジミーってマゾ?」
「否定はしませんけど。……じゃなくって」
何て言えば伝わるだろうか。何て言えば無難だろうか。
「……だってまさか、さすがに俺を女とは言えないでしょう?」
「はァ?」
そこでやっと旦那は砂糖の塊から意識を逸らして、俺を変な目で見た。
「そりゃァジミーは女には見えねェよ」
「でしょう?」
だから何なの、という視線を無視して、俺はやはり頭の中だけで言葉を紡ぐ。
だってまさか、俺の女、とは、言えないでしょう?
だから、
「狗って言うしかないんですよ」
ああでもきっと、本人に言ったら怒られるなァ。そりゃあもうものすっごく照れて。