じゅ、と肉の焼ける匂いが鼻につく。
「うぁ……っ……ぁ……んっ」
すっかり塞がった背中の傷跡に赤く焼けた火箸を押し付けら、薄く開いた唇から小さく声を零した。短い爪を畳に立てるが、叫びだしたいような傷みは止まない。荒い呼吸を繰り返しながらぎゅっと目を閉じれば、山崎、と背後から名前を呼ばれた。
「……は、い」
「お前、こんなことされてよがってんじゃねーよ」
苛々とした口調で髪を引っ張られ丸めていた上体を起す。声の主、暴力の元を涙の膜の張った目で見上げれば、小さく舌打ちをされた。
「他の奴につけられた傷、いつまでも残してんじゃねェ」
吐き捨てるように言われ、荒々しく唇を塞がれる。背中が痛むのと、呼吸が自由に出来ないのとで意識が白く濁っていく。
「俺は……あなたが俺を想ってすることなら、何でも幸せなんですよ」
整わない呼吸に混じって言えば、土方の手がするりと出来たばかりの火傷に触れた。
「……知、らなかったんです、か?」
小さく笑えば、今度は柔らかく唇が塞がれた。ぼやけた世界に近い距離、焦点の合わないその顔を見つめて悲しくなる。
(幸せなのになぁ)
だからそんな、苦しそうな顔しなくたっていいんですよ。