痛くしてやろう、と思った。
部屋に呼んで閉じ込めた。髪を掴んで引きずった。白い肌が畳で擦れて赤くなった。
頬を張った。手首をぎりぎりと強く握った。柔らかくもなんともない、でもやはり他の場所よりは柔らかい腹に蹴りを入れた。首に指をかけた。一本ずつゆっくりと見せ付けるように巻きつけていった。そして力をぐっと込めた。ぐう、と苦しそうに喉が鳴ったのですぐに離した。
山崎は穏やかな目をしていた。
頬が赤く腫れている。唇が切れて血が滲んでいる。手首に痣が出来ている。肌が赤くなっている。けれど穏やかな目をしている。
顔を覗き込んで、「泣くかい?」と尋ねた。
少し黙った山崎はやはりひどく穏やかな目でいっそ切れた唇に笑みまで浮かべて、「いいえ」と言った。「泣きませんよ、大丈夫ですよ」と甘やかすように柔らかく言って、そして微笑んだ。
堪らずもう一度殴った。蹴った。山崎は泣かなかった。乾いた瞳で時間を気にしていた。
「やまざき」
呼べばこちらを、真っ直ぐ見て、はい、ときっちり返事をした。
アイツの前なら泣くくせに、俺には涙も見せやしない。
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