涼しくなってきましたねぇ、と笑って山崎は伸びをした。衿からちらちらっと覗いた白い首に不自然な赤い痕を見つけて、沖田は思わず唇を引き結んだ。
「どうかしましたか?」
へら、と山崎が聞くので、沖田は少し迷ってから
「別に」
と素っ気無く答えた。山崎はそれにちょっとだけ困った顔をして、けれどすぐ、何事もなかったかのようにまたへらへらと笑って鼻歌など歌い始めた。
キスマーク見えてるぜ、とからかってやろうかなぁ、と沖田は少しだけ、ほんの少しだけ迷って、下唇を突き出した。やめよう。決めて、きゅっと唇を緩く噛む。
狼狽されても照れられても平然とされても、きっと、自分の心についた傷がきれいに抉られてしまうだろうと気付いてしまった。
(……大丈夫だと思ったんだけどなァ)
自分のものにならなくても、傍で笑っていてくれるなら大丈夫だと、思ったのだけど。