両手一杯に抱えた花を眠る山崎の上にばさばさと零した。香りのない花が切ったばかりの草の匂いだけさせて落ちていった。畳の上に無造作に散っている黒い髪に赤い花の色が思ったとおりよく映えた。
顔と首と手と足と遠慮なく落ちたその花に叩き起される形になった山崎は眉を寄せて薄く目を開けた。こちらを見て、自分の周囲に散らばった花を見て、それから、落ちた花の茎がなすりつけた汁を頬から拭って赤い舌でちろりと舐めた。
「俺は、毒じゃあ死なないよ」
少し笑ってそう言った彼はこちらへ手を伸ばして、勝手に指を絡め取った。緩く引かれるので膝を付き身を屈めればそうっと頬へ滑る手。
「俺は毒じゃ、死ねないよ」
もう一度言って笑うので、その唇へと唇を押し当てた。切ったばかりの草の匂いだけ空気に溶けていた。茎から染み出すその毒で、この花に似た色の血を吐き出して死ねばいいのに。
耐えれぬ想いを口移しするから、毒だと思って死ねばいいのに。