「ねえねえ沖田さん! ねえねえ、ちょっと聞いてくださいよ!」
やけに興奮した様子で山崎が居室に転がり込んで来たので、惰眠を貪っていた沖田は少しばかり驚いた。
「……何でィ。宝の地図でも見つけやしたかい」
「さっきコンビニ行ったら、めちゃくちゃかっこいいバイクが止まってたんスよ! しかも4台! でかくてカスタムしてあってすげーかっこよかったぁ。見ました? 見た方がいいですよマジでかっこいいから!」
目をきらきらと輝かせて捲くし立てるので、そうかィ、と返事をするので精一杯である。
けれどその沖田の反応が気に入らなかったのか、山崎は表情を一変させ、拗ねたような顔で沖田をじとりと睨みつけた。
「本当にかっこよかったんですってば」
「別に疑ってるわけじゃねぇけどさ」
「あんなバイク欲しいなー。乗り回したい。気持ちいいだろうな。後ろに乗っけてもらうんでもいいけど、絶対爽快ですよね。万事屋の旦那のバイクじゃあなぁ、全然面白くなさそうだし。あんくらいかっこいいバイクで遠出とかできたら楽しいだろうなぁ」
再び目を輝かせて山崎はうっとりと虚空を見つめた。思い描く妄想に浸っているのだろうが、傍から見ると少し気持ちの悪い光景である。
「……じゃあ、俺が乗っけてってやるよ」
「え? 沖田さんバイク転がせましたっけ?」
「転がせねぇけど、どうにかなるだろ」
「いや、どうにもならないスよ多分。あれもっとガタイ良くなきゃ無理です」
あんた俺と体格変わらないのに、と笑う山崎が腹立たしい。
「お前山崎生意気なこと言ってんじゃねェぞ、絶対後ろ乗っけてやんから、楽しみにまってろィ」
びし、と指をさして宣言すれば、山崎はおかしそうに笑って、あろうことか目尻に拭った涙を拭って、「はいはい」とひどくてきとうな返事をした。
沖田はそれにやはり腹が立った。
山崎はおかしそうに笑ったまま、あーでもかっこよかったー、と、まだ懲りずに言っている。
何か言い返そうか、どうしようか。これ以上言葉を重ねればあまりにみっともなく情けなく馬鹿らしい嫉妬をしているとバレてしまいそうなのだけれど、やはり、目の前でそううっとりされると、面白くはないのだ。ちくしょう。