「好きです」
沖田は山崎を少しだけ見て、それからふいと顔を背けた。
口元に薄く笑みが浮かんでいる。瞳は遠くを見ている。
「俺は、山崎のことが好きですぜ」
眉が少し下がっていて、泣きそうになっている。口元は笑っているのに悲しそうな顔。
山崎は膝の上でぎゅっとこぶしを握った。
なんで、「俺も」じゃないんですか、とか。
どうして悲しい顔をするんですか、とか。
ひどい。ずるい。届かない。浮かんだ言葉は表面上通じ合っているようなのに、ちっとも届いていないのだ。一ミリだって掠りもしない。ずっと遠い。
けれど、それを言っても沖田は聞かないのだろうと悲しく理解して、ただ山崎は
「よい天気ですね」
と、空を見上げて言うだけにした。
百万回愛してると言えば届きますか。
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