いつも思うのだが、何でこいつはこんなにへらへらしているんだろう。
仕事中や他の隊士と話しているときには、少し難しい顔を作っている気がする。ミントンで遊んでいるときだって、難しいきりっとした真剣な顔をしている。
だのにどうしてこうやって二人でいるときには、機嫌のいいような、機嫌を伺っているような、へらへらとした顔をするのだ。
「テメェの顔見てっと、イライラする」
あまりに苛っとしたので、それをそのまま言葉で伝えれば、
「はは。ひどい」
と、またへらり山崎は笑った。
それが少し楽しそうな笑い方だったので、あ、いちおうへらへらしてる中にも種類があるんだ、とどうでもいいことに気が付く。
「いいですよ、殴っても」
突然山崎はそう言って、突然口を噤んだ。静かになった。
別に殴るとか言ってねぇのに何言い出すんだ、と思って見れば、へらへらとした雰囲気はすっかりなりを潜めてしまって、山崎はただ、ふわりとやわらかく笑っている。
お好きにどうぞ、と言わんばかりの穏やかな微笑を浮かべて、軽く目など閉じている。
それがまた、余裕ぶっているようで、腹が立った。
胸倉を掴んで引き寄せる。山崎は抵抗しない。
殴る代わりに唇に噛み付いてやる。山崎は抵抗しない。
ただ少しだけ驚いたのかびくりと体を引いた。けれどそれもすぐに、大人しくなった。
殊更ゆっくり唇を離せば、山崎が自分の唇をちょっと触って、
「かわいらしい暴力ですね」
と笑った。
痛ぇ、などと唇を触りながら、おかしそうに笑っている。
「そんなだから俺は、」
あなたを甘やかしたくなるんですよ。
と、山崎が本当に嬉しそうな顔で言ったので、
(ああ……俺は、甘やかされていたのか)
と、そこではじめて気が付いて。
気が付いたら思わず口元が緩んでしまったので、ああこういうことか、と思いながら、恥ずかしいので少し殴った。
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