「俺はお前の為には生きられねーぞ」
そうわざわざ口にしたのは、そうでもしなければ自分で自分を戒めることができそうになかったからだった。おそらく。
「俺はお前を、一番には」
できない、と言う声が、少し掠れた。煙草の煙が絡まったからだ。そうに違いない。
山崎は正座したまま大人しく土方の言葉を受けている。姿勢がいい。まっすぐ伸びている。目線は畳の上に落ちている。
「じゃあ、」
山崎が口を開いて、それから少し間があいた。
何を言われるのか、と少しだけ緊張しながら、土方は煙を吸って吐く。
「……俺が代わりに、あなたの為に生きますよ」
畳の目を見つめたまま、山崎が言った。
ぽかんと口を開いた土方に一度ちらっと視線を向けて笑ってみせた。
「あなたの一番になれなくても、俺の一番は、あなたですから」
何があっても、と。背筋をぴんと伸ばしたまま山崎がはっきりとした口調で言う。
「……そうか」
嬉しさが滲んでしまわないように、殊更気をつけなければいけなかった。
煙を吸って、吐いて、目を閉じる。今山崎の姿を見れば、抱きしめてしまうような気がしている。
土方はひとつ咳払いをして、それから、そうか。ともう一度言った。
はい。と山崎のまっすぐな声が返る。
(じゃあ、)
お前の為に生きられない代わり、いつか最後は、お前の為に死んでやろう、と。
浮かんだ言葉は、土方の脳裏に浮かんだまま行き場を失ってしまっている。
言えばきっと弱くなる、と土方は思っている。
山崎を一番にしたいという心が露呈してしまうのではないかと、思っている。