山崎の襟首掴んで力任せに引き寄せた。驚く顔めがけて顔を寄せたら、勢い余ってがつんと歯がぶつかった。器用にキスなんてできやしないし、するつもりもない。山崎だって大してでかくもねぇ目を限界まで見開いたまんまで、色気なんて、ありゃしねえんだ。
口の中に舌を差し込んで山崎の舌にこすり合わせた。背筋がぞわっと震えてどうにかなりそうだ。俺の唾液が毒で、そんで山崎の中に入り込んで、それが元で病になればいいのに。そしたら俺が、一生かかって面倒みてやってもいい。
「ちょ、まっ、ねえ、おきたさ…」
山崎が思い出したように抗って俺の体を押しのけた。当たり前だけど驚いたような顔をしてる。そうだよなあ。当たり前だ。別に、キスしたからってそれを受け止めてうっとりしてくれるなんて夢見てたわけじゃねえし? というかそもそも、上手なキスの仕方だって知らねえもの。
「…………総ちゃん?」
あー、もう、何でこいつはこんなときにそんな呼び方で、呼ぶの。なんなのこいつ。
「どうしたの?」
何でそんな心配するような顔をすんだよ。どうもしねえよ。今突然どうこうなったわけじゃねえよ。
「……ごめんな、」
抱きつくことしかできなかった。抱きしめる、なんて、そんなすてきなもんじゃなかった。
ごめん、と耳元で謝る声に山崎が戸惑うような声を出す。お願いだから優しくしないでくれよ。
ごめんね。ごめんなさい。俺はお前を好きになったよ。お前を好きになったってそれでお前を幸せになんかできねえのに、困らせるだけなのに、好きになったよ。我慢できないくらいに、お前のことが好きなんだ。
「総ちゃん……大丈夫?」
何でそんな優しくすんだよ。お願いだから最後まで抗って。期待させないで。お前をきっと悲しませたり苦しませたりすることしかできないのに、これ以上好きにさせんなよ。
誰かのものだから欲しいんじゃねえよ。奪いたいんじゃねえよ。
お前だから好きなんだよ。言いたくなるから、優しくしないで。