わざと血が多く吹き出るような殺し方をした。差し込んだ刀を抉るようにして抜いた。単なる生ゴミになった死体を踏みつけてやりたい衝動にかられたが、次の殺気がしたので断念した。
成程自分は鬼だろう。生暖かい血飛沫を全身に浴びながら薄く笑う。
自分は鬼だろう。が、こうしているのは、何より情があるからだ。
(だっておめえら俺の持ち物に手を出したろう。あいつの体を好き勝手にいじったろう。気持ちよかったろう温かかったろう。あいつが何故ちっとも嫌がらずむしろ進んでそうしたか今ここで教えてやろう。あいつが俺の狗だからだよ)
(おめえらに情があったから抱かれたんではねえのだよ)
自分勝手な憂さ晴らしで盛大に人を斬った鬼はやはり薄く笑みを浮かべたまま、三つの死体を踏み越えてさっさと自分の持ち場に戻った。無駄なことをしたので刀が曲がって鞘に収まらなかった。血に濡れたそれを下げたままゆらりと歩く。
この死体の検分をするのは狗の仕事。その血に汚れた手を取って狗を優しく抱いてやるのが、鬼の次の楽しみだった。
成程、自分は、鬼だろう。そんな残酷でちっともきれいでないことを喜ぶように、狗の心を壊したのは自分なので。