はらりと解いた包帯の下に真っ青な蝶が一匹。
肌のほのかな白さを一層引き立てるように青く飛ぶそれに指を這わせて、沖田は微笑んだ。
「思った通りだ」
お前の肌によく似合う。睦言の響きで、言って、その指が肌に彫り込まれた蝶を形作る線をゆっくりと撫でる。
足の付け根、着物を大胆にまくっても、容易には見えない場所へ。
大人しく止まっている蝶と、それを撫でる沖田の指を見下ろして、山崎は悲しげに笑った。
「お気に召しました?」
「うん。すげえきれい」
子供のような素直な称賛。山崎の顔を見上げにこりと笑う沖田はどこまでも無邪気だ。
哀れなほどにまっすぐだ。
「痛かった?」
「斬られるよりずうっとマシです」
「誰にも見せるんじゃあねえよ」
「わかってますよ」
足の付け根、下着をつければ隠れてしまう場所など、誰に見せることがあるというのか。
指で撫でていた蝶に、沖田は顔を近づける。
ぴくりと揺れた山崎の肩を笑って、柔い赤い唇が真っ青な蝶へ触れた。
さらりと流れた色素の薄い細い髪を、山崎の指が梳いていく。
「……これでおめえは、俺のもんだ」
ほとんど吐息だけで沖田が囁いた。
温かな息が山崎の肌を泡立たせる。
「もう、どこにも、逃がしてやれねえなァ」
最初から逃がす気など、ないくせに、そんなことを言って、沖田はふわりと笑った。
まっすぐで、あたたかくて、どこまでも無邪気な、子供のような笑い方だ。
「……ごめんね」
「何が?」
柔らかい細い髪を慈しむように梳きながら小さく零れた山崎の言葉に、沖田は不思議そうな顔をする。
「それは俺の台詞だろ」
「うん、でも」
ごめんね。
悲しそうに笑いながら繰り返した山崎に、沖田が少し眉根を寄せる。
山崎は言葉の理由を言わず、肌に刻まれた蝶に触れる沖田の顔を引き寄せて、その唇に自分のそれを押しあてた。
こんな風に壊してごめんね。
喉に絡まる言葉は湧いた唾液と一緒に飲み干した。